今回の「日本酒&チーズプロジェクト」の第一弾として、我々は四国の司牡丹を選びました。確かに四国は、「日本酒の産地」ときいて、一番には浮かばないかもしれないですが、一人当りの日本酒消費量が多いと俗に言われる漁師さんがたくさん住んでいる事は有名ですね。
そして、我々の方針は、「美味い酒を飲むなら一本一気に飲み干したい!」ですので、そういった飲兵衛にとって、矢張りこの司牡丹のラインナップはとても魅力的です。先生と僕も、漁師さんと同じなので、皆さまご理解ください(笑)
司牡丹の酒は、かなり力強くて、エネルギーを感じさせられるものでありながら、決して荒い、ワイルドすぎる 味わいではなく、とても正直なお酒です。この正直という表現は、ドイツ人的な表現、発想だと思いますが、すごくポジティブな意味合いを表しています。
それでは、まず一本目!司牡丹といえば、やはりこの「船中八策」の銘柄です。日本酒度では+8になりますが、口当たりはさほど辛口ではないですよね。で、そこがポイントなんですよー。そもそも日本酒には酒の肴をあわせるもので、まあ、最低限升酒のように、お塩を少量つけたりもするものですが、今回、先生は以下のようなチーズを選んできました。
Brewery: Tsukasa Botan
Name: Senchu Hassaku
Type: Tokubetsu Junmai
Alc.: 15.9%
SMV: 8
RPR: 60%
Acidity: 1.4
Amino acid: 1.1
Rice: Yamada Nishiki, Akebono
Prefecture: Kochi
Heinzelcheese先生の感想とお勧め:
日本酒という飲物を理解するには、正直かなりの時間を要しました。ライスワインという英訳は誤解を招くだけですし、作り方がビールに似ていても勿論ビールではありません。ならば、いっそのこと“SAKE”と呼びましょう!ワインの甘口、辛口といった概念も日本酒には当てはまりません。それは、日本酒の酸度(酸味)が、ワインの大体5分の1しか持たないためです。しかしながら、日本酒のもつ「うま味」は、熟成チーズにも共通するものです。
司牡丹の船中八策純米酒のようなストレートで、親しみやすい日本酒は、初めてのチーズと日本酒のペアリングにぴったりです。
熟成した山羊チーズ「クロタン・ド・シャヴィニョル」とは、すっきりとした味わいで、全く違和感のない組み合わせでした。しかし、最終的に一番気に入ったのが、この24か月熟成のパルミジャーノで、今回選んだのはCraveroというチーズメーカーのものです。粘板岩のような食感、このエミリア=ロマーニャ産の定番である牛のチーズはまるでスポンジのように酒を吸収します。チーズと日本酒のうま味成分はほぼ同レベルです。もうこれで完璧な食事になっていますね。チーズをよりおいしく食べるためにスライスするよりも、少しずつ崩した方がお勧めです。長い熟成でチーズのたんぱく質がアミノ酸に変化して、より「うま味」がでます。
チーズのおすすめ:パルメザンチーズ(できれば熟成したもの)と山羊チーズ(できれば熟成したもの)
今月第二弾は、「夏純吟」です。そうそう、日本酒ってそもそもドイツの伝統ビールのように、季節を感じるアルコールです。夏向けの酒は、より爽やかでフレッシュな、日本の熱い夏の蒸し暑さを忘れられるような味わいとなっています。
Brewery: Tsukasa Botan
Name: Natsu Jungin
Type: Ginjo
Alc.: 16,9%
SMV: +5
RPR: 60%
Acidity: 1.3
Amino acid: 0.9
Rice: Akebono, Omachi, Yamada Nishiki
Prefecture: Kochi
この「夏純吟」は生酒ではないですが、火入れを一回しかしていないので、いい具合で生酒の風味を残しながら、充分吟醸の華やかな果実香を漂わせています。
可愛い夏の花火ラベルと涼しげなブルーの瓶はドイツ人にも大変好評です。さて、先生はどういったチーズを合わせるでしょうね。
Heinzelcheese先生の感想とお勧め:
わー、危ないいい!余りにも飲みやすいから、あっという間に一本飲みほしてしまいました。このメロンのような香りと味は、とても印象的です。このフルティーさをかんがえて、最初は比較的若いアルプスのハードチーズに手をのばしました。このチーズとの酸味は、かなり良いペアリングだと感じました。ただ、オランダBooji家のBoerenkaas(農家のチーズ)との組み合わせは、更に刺激的でした。このチーズは広義的な意味でゴーダのカテゴリーに属しますが、最高の品質、生の牛のミルク、製造時の細部への、とても手の込んだ配慮により、独自のカテゴリーにも分類されます。非常に若いゴーダの典型的な甘味、酸味、塩味とは対照的に、4ヶ月も経つと、より調和のとれた味わいになり、クリーミーな豊かさが滑らかな酸味によって運ばれてくるようになります。テクスチャーは弾力性があるというよりは、とろけるような感じで、まさにそのような上質な培養クリームの印象を「夏純吟」は感じさせます。そうすると、チャツネもイチジクマスタードもモスタルダも忘れてしまうほど、チーズにひとさじのフルーツが加わり、さらに爽やかな味わいになります。この2つを合わせると、夏空の花火のように楽しく、それでいて完全に地に足がついたような、純粋なエレガンスさを感じとることができます。